OTの思い出。
私が精神科の病院でOTとして働いていたころ、
一人の青年の病床を尋ねるように依頼を受け、病床を尋ねました。
彼は、そのころ、看護師にも医師にも他のスタッフにも暴言を吐き、暴力も振るい、
ベッドの上で排尿、排便もしっぱなしで手の付けられない状態でした。妄想もまだ強い状態でした。手すりで囲まれたベッドの上だけが彼の世界でした。
私もその話を聞いていたので、はじめはかなりの不安を抱いていました。
何ができるかもわからないまま、毎週決められた時間に病床を尋ね、はじめは、ただ病床を尋ねて顔をみるくらいでしたが、少しづつ声をかけたりしながら、関わりを持つようになりました。
彼が、体に触れることを許してくれるようになるまで、時間をかけてそっと待ちました。
足腰も硬くなっていたために、彼に許可をとりながら、すこしづつ動かしたりさせてもらいました。
薬や他のスタッフの働きもすこしづつ効果も出て来て、少しづつ彼も穏やかになってきました。
今まで手を付けられなかった彼が、次第に穏やかになっていくこと、かかわりが持てるようになってきたことに他のスタッフもある意味驚きを感じながら見守っていました。
やがて、寝返りができるようになり起き上がることができるようになってきました。長い間、寝たままで過ごしていたために、もう立つ力はなくなっていました。
徐々にではありますが、リハビリを重ねて、やがて車いすに乗ってリハビリ室にまで来ることが出来るようになりました。
大分時も経って、ほかの患者さんと同じくらいに関わることが出来るようになってきたころです。
ある日、彼がいつものようにリハビリ室にやってきて、ベッドに腰かけている姿を見た時、私はある驚きを覚えました。彼は、長身で色白でかなりの長髪で西洋人っぽい風貌です。
いつものように彼に目を向けると、彼が静かに待っているその姿に、イエス様が写し出されていたのです。その時、ああこういうことだったんだと思いました。
私は、イエス様がこの青年の姿で私と関わっていて下さったこと、この統合失調症の青年に接していたことはイエス様に接していたことだったんだと気が付かされたのです。
しばらくして、わたしはその病棟を離れましたので、彼との関わりは終わりました。
けれども、ある期間、彼を通してイエス様に触れていたことは私の貴重な体験となりました。